■2025年10月3日(金)19:00~20:30
■ 参加者数: 31名
― 伝統工芸部部長・漆原さんの感想 ―
今回は日本橋三越本店で個展開催中の伊賀焼の陶芸作家である谷本洋先生をお迎えし、お話をうかがった。特に印象に残ったことは以下の3点である。
1点目は、実用の工芸品はそれ自体で役割を完遂するものではないということである。例えば、花器であれば花を活けてはじめて完成するものであり、抹茶碗には茶葉に湯が注がれることが必要であり、食器であれば食べ物が盛りつけられてはじめて成立するものであるということである。実際に三越の先生の個展会場の至る所に山村御流の花が活けられていた。百貨店の個展会場ではあまり見ない光景のようにも思った。実用の工芸品であれば、当たり前のことといってしまってもよいことかもしれないが、それをきちんと言語化され、実行されていた。この点について、強い意識を持ってものづくりを取り組まれているのであろう。
2点目は、暗い茶室の中で作品を鑑賞する際には想像力を働かせてみる。すなわち、心でみることが大切であるということである。はっきりさせることが求められる昨今であるが、むしろ、はっきり分からない中であるからこそ、想像力や感性を育てられるということなのであろう。これは茶室や茶道においてのみではなく、様々なことに応用が効くことではないかと思った。
3点目は、口伝こそが大事であるということである。オンラインではなく、ライブにこだわられている。実際にヨーロッパを中心に海外でも活動をされている。フランスなどでは、今、日本の柔道、弓道、茶道のように「道」が求められているが、確かに対面での真剣勝負でない限り、「道」を伝授したり、体得したりすることなど到底叶わないことであろう。
谷本先生は組織や流派に所属せずに活動している。自力で、実力で、本物を作られている人の言葉は大変説得力があり、真実の言葉と感じた。三重テラス伝統工芸部では、工芸品の鑑賞を中心に活動しているが、今回のように、伝統的な工芸品のものづくりを生業とされているプロの方に、工芸品とどのように向き合えばいいのかを教えていただく、このような機会も非常に大切である。

― 参加した部員の感想 ―
「作家さんご本人のお話を聞けるのはとても貴重で、伝統工芸を身近な存在だと感じることができた。」
「谷本さんのお話を聞いたあと、谷本さんの展示会にも行かせていただいたがご本人の想いを聞いて鑑賞をすることによって、作品をより深く感じることができました。」
― コミュニティマネージャー阿部のコメント ―
谷本さんの言葉から感じたのは、伝統工芸は“哲学”のようだということ。
作品は人なり。器は飾るものではなく、使われて初めて完成する。
ものづくりを通して、人の生き方や考え方が形になっているのだと感じました。
また、「間」を大切にする日本の感性にも心を打たれました。
間があるからこそ想像力が広がり、つくる人・見る人・使う人がつながっていく…。
今回の活動をきっかけに展示会へ行かれた部員さんもおられて、部活動での出会いが次の行動へとつながっていく姿に、伝統工芸を身近に感じ合える場として育っています。
