2026年1月14日(水)18:30~20:30
■ 参加者数: 10名
今回の伝統工芸部では、『現代アーティスト・画家』で三重県津市出身のRIO UMEZAWAさんと一緒に、三重の伝統工芸である鈴鹿墨をテーマに、実際に墨をすり、筆を使って描く体験を行いました。
鈴鹿墨は、墨として日本で初めて伝統的工芸品の指定を受けた名誉ある墨です。発色が良く、上品で深みがあり、基線とにじみが調和するという特徴があります。手作業でひとつひとつ丁寧につくられた鈴鹿墨は、墨下りがなめらかで多くの書道家に愛用されている逸品です。(「鈴鹿墨」鈴鹿市HP引用)
一人ひとり異なる色の鈴鹿墨をすりながら、
参加者同士で墨をシェアし、自由に試し描きを楽しむ時間となりました。

「半紙は、ツルツルしている方が上ですよ〜。」
そんな声がかかると、会場にはどこか懐かしい空気が流れ、
学生時代を思い出すとつぶやく参加者の姿も見られました。
各自がすった鈴鹿墨をテーブルに並べ、みんなで共有しながら試し描き。
文字を書く人、風景を描く人、心に浮かんだイメージをそのまま筆にのせる人…
同じ鈴鹿墨でも、色や線はそれぞれ異なり、参加者一人ひとりの感性が半紙に現れました。

扇子や半紙に書くものは自由でしたが、
「津は、住んでいた場所。学生の頃、遅刻しかけたとき、出発したのに止まって乗せてくれた電車の思い出がある。」
「伊勢も好きな場所。」
「熊野出身だから熊野を描いた。」
「三重は何にもないのが心地よい。」
など三重への想いを馳せながら書く人もいました。


部員の声
- 筆を持つのは学生ぶりで、少し緊張しました。鈴鹿墨は授業で体験したことがありましたが、色があることは知らなかったので驚きました。
- 鈴鹿出身ですが、鈴鹿墨のことをよく知りませんでした。墨から色が出るのがとても面白かったです。
- 山水画を見るのは好きでしたが、描くのは初めてでした。描くことで、書く人の気持ちに少し近づけた気がしました。
- 出身は日本橋で、普段はIT業界にいます。なので手書き(墨を使う時間がとても新鮮でした。
- 三重に住んでいたことがあり、書道も習っていました。三重テラスの存在は以前から気になっていて、伝統工芸部で墨を扱うと知り、久しぶりに筆を持ちたくなり参加しました。
- 三重にゆかりはありませんでしたが、鈴鹿墨を通して三重を知ることができました。伊勢が三重だと初めて知った。

―今回の鈴鹿墨ワークショップ講師(伝統工芸部の部員)RIO UMEZAWAさんの感想―
普段のアートワークショップでは、自分が三重県出身であり、地元で作られている鈴鹿墨のお話まではできないのですが、鈴鹿墨についてご紹介もできて、色墨の素晴らしさも知っていただけて嬉しかったです。墨や硯をシェアするスタイルにさせていただいたので、自然と会話が生まれ、最後は皆んなでワイワイ和気藹々とお話ししながら、扇子に唯一無二のオリジナル作品を描き上げていただきとってもいいワークショップになったと思います。有難うございました。
― 伝統工芸部部長の漆原さんの感想 ―
今回は講師をRIO UMEZAWAさんにお願いし、鈴鹿墨の色墨ワークショップを開催した。筆は奈良墨のあかしやさん。白硯は奈良の墨運堂さんのものを使用されていた。色墨は鈴鹿墨の進誠堂さんのものであった。
私が進誠堂の伊藤忠さんと出会った頃、鈴鹿製墨協同組合の専務理事の任にあり、通商産業大
臣指定伝統的工芸品の鈴鹿墨の伝統工芸士となられていた。その後、2005年に組合の代表理事に就任、2007年には雅号・伊藤亀堂を名乗れ、2013年には経済産業大臣賞、2014年に現代の名工、2019年に黄綬褒章を受けている。伊藤さんは先代から引き継がれ、社長になってから「黒だけじゃない独特の墨をアピールしたい」と、有機顔料や天然の鉱石を使った色墨の制作に取り組んできた。当時は「書を冒涜している」と批判が多かった」と振り返えられているが、今では人気商品になっていて、現在、三重テラスでも販売されている。今回の伝統工芸部部活動で使用された墨がこの「雪月風花8色セット」であった。
伊藤さんが確か25年前頃に、私に試作品の色墨で半紙に筆でかいたものを見せて下さったこと
を覚えている。あの時、伊藤さんは確かな手応えを持って高揚されたように記憶している。今回
、図らずも、三重テラスで、そして伝統工芸部で、伊藤さんが作られた鈴鹿墨の製作体験をさせ
て頂いたことは感慨深く、また、有意義なことであった。「雪月風花8色セット」が収納されて
いる木箱には「経済産業大臣指定伝統的工芸品 鈴鹿墨」と記された伝統証紙が貼付されていた
。1980年に鈴鹿墨が通商産業大臣指定伝統的工芸品として指定された告示内容には、技術・技法
として、墨玉、成形方法、乾燥方法、仕上げ方法が、原材料としては、煤と膠について定められ
ていて、この商品はその基準に則った、まさに伝統的工芸品である。
ところで、元サッカー日本代表の中田英寿は、現役引退後、日本全国を旅して伝統工芸、農業
、日本酒などの生産の現場を訪ねる活動を精力的に行っている。その過程で、職人の技術を実際
に体験し、その魅力を発信している。 私自身は全国45都道府県で150超える伝統工芸産地に訪問
し、ものづくりの現場を中心に見学をしている。しかし、時間的制約もあり、その中で、実際に
産地において、制作体験をする機会に恵まれることは滅多にない。むしろ、東京で産地の方がい
らした際にそのような機会を頂くことが稀にあるが、電動ろくろ、和紙の紙漉き、機織り、箸の
研ぎ出し、皿への漆絵付け、螺鈿の貝貼り、箱根寄木細工のコースター作りぐらいであろうか。
体験できる機会は極めて貴重である。また、体を動かし、まさに体感、体得することは伝統工芸
についての理解を深める上で非常に有効である。今回は墨作りではないが、墨を実際に使う機会
はずっとなかったので、大変貴重な機会となった。また、半紙に竹を画く際の筆の使い方を教え
て頂いたが、まさに目から鱗であり、山水画への関心を強く喚起して下さるものであった。
翌日から台湾訪問という大変お忙しい中、ワークショップを実施して下さったRIO UMEZAWAさん、事前調整、準備及び当日運営でお力添え下さった三重テラスの水野さん、阿部さん、山田さんをはじめスタッフの皆さんに御礼申し上げます。親切な水野さんが伊藤さんに、私が伝統工芸部で活動してくれることを伝えてくれたので、15年以上の時を経て、いつか、伊藤さんと再会できるかもしれない。
― コミュニティマネージャー阿部のコメント ―
今回の伝統工芸部では、鈴鹿墨を実際にすり、筆で描く体験を通して、伝統工芸をより身近に感じる時間となりました。また、墨の色が異なることに感動する参加者も多く、色の出方や描かれるモチーフは人それぞれ異なり、参加者一人ひとりの記憶想いが紙に表れていたのが印象的でした。
また、普段持つ機会のない筆を持つことで、学生時代の記憶がよみがえったり、手を動かすことの心地よさを再発見したりと、日常とは異なる静かな時間が流れました。鈴鹿墨を通して、三重という土地や伝統工芸への関心が広がるきっかけとなる活動となりました。
