■2025年7月14日(月)18:30~20:00
■ 参加者数: 17名
暮らしの中で見かけることはあっても、その背景や魅力を知る機会は意外と少ない伝統工芸品。そんな「なんとなく気になる」存在を、もっと身近に、もっと好きになるきっかけとして、伝統工芸部は定期的に活動を実施しております。伝統工芸部には、初めて工芸品に触れる人から長年の愛好家まで、幅広い顔ぶれが集まります。それぞれが持ち寄るのは、器などの工芸品だけでなく、背景にある物語や知恵、そして日々の暮らしの視点です。
第一回に引き続き、第二回活動も各自が工芸品を持ち寄って紹介し合いました。部員の中に、伊勢茶や和菓子を持参して参加されている方も。工芸品は飾られているイメージがありますが、本来は「使うもの」。実際に工芸品でお菓子とお茶を皆で味わいながら、対話形式で和やかに進みました。

初めて伝統工芸部に参加した部員からは
「これも伝統工芸なんだと思うと、もっと知りたくなった。」
「実家に眠っていた工芸品の魅力を知りたくなった」
と、ちょっとしたきっかけをもとに、集まってくださった方々が知識の有無にかかわらず、誰もが安心して楽しめる空気が、会場には流れていました。
また、部員の柴田さんが持参した季節を感じる和菓子は、道明寺粉と白餡を使い、バタフライピーで七夕の夜空を表現。お茶は、四日市市の「HORAIかぶせ茶」。収穫前の2週間、日光を遮ることで苦味を抑え、豊かな甘みを引き出したものです。実はこのお茶は、部員の伊藤さんのご実家が営んでいる『伊藤藤太郎商店』のものでパッケージデザインも伊藤さんが担当され、リブランディングに力を入れているとのことでした。

テーブルに並ぶ工芸品たちは、どれも“暮らしの物語”をまとっていました。
鉄分の多い土が生む赤みが特徴の四日市萬古焼は、「この器にぜんざいを入れたい!」という声とともに、スイーツトークで盛り上がり、山形の一刀彫りは、お子さんとの思い出が詰まった品として紹介されました。
和装が日常になればいい、という思いから披露された大島紬の着物。
艶やかな有田焼の器に、日本酒が映えるという話。
三重県御浜町で、すでに廃窯となった御浜焼の貴重さ。
竹で編まれたうちわやざるは、素材の力がそのまま道具になっているようで、
「風の力が全然違う」「軽くて丈夫」と感嘆の声があがりました。

「工芸品に詳しくなくても、丁寧な紹介があったから安心して楽しめた」
「萬古焼しか知らなかったけど、他の焼き物にも目が向くようになった」
「“きれい”で終わっていたものが、“欲しい”と思える存在になった」
部員の声からも、ほんの少し知ることで見える景色が変わることが伝わってきます。
伝統工芸というと、どこか敷居が高いものに感じられることもあるけれど、実際は、暮らしの中にある“日常のアイテム”。誰かの話を聞いたり、使い方を想像しながら語り合うことで、その美しさや背景にふれることができます。
この日も、工芸品についての知識だけでなく、人との対話の中で思いがけない発見や関心が生まれていました。伝統にふれることが、ちょっと未来の暮らしを豊かにするヒントになりますように。次は、あなたの「好き」や「気になる」を、伝統工芸部で一緒に分かち合いませんか?
(伝統工芸部担当:コミュニティマネージャー阿部)
以下、伝統工芸部の部長のコメント
伝統的な工芸品が作り続けられるためには、平和な社会であることが必須の基盤になります。紛争のある社会では伝統工芸品の存続を望むことはできません。1974年の伝統的工芸品の産業に関する法律が制定され、振興事業が50年に渡って続けられていますが、伝統工芸品の生産額、従事者数の減少傾向に歯止めがかかっていません。日本には全国各地に1,000を超える伝統工芸品があるといわれますが、それがいかに貴重なことであるのか、そのことを伝統工芸品の実物に触れたり、鑑賞したりすることを通して、この夏よく考えていきたいと思っています。
今回も、着物、布製品、陶器、磁器、漆器、竹細工、人形、団扇など様々な業種の工芸品が集まりました。伝統工芸品をテーマとして、人と人が交流することができることを改めて嬉しく思いました。